収益力が下がり続ける築古物件の3つの出口とは?
◆築50年超の“貸せない・埋まらない”物件があふれ出す
賃貸経営において、「築年数の古い物件をどう扱うか」は、避けては通れない課題です。
とくに築50年前後の物件は、設備の老朽化や入居者の減少、修繕費の増加といった複合的な問題を抱えており、「もう貸せない」「埋まらない」と悩むオーナー様も少なくありません。
国土交通省の「住宅経済関連データ」によれば、以下の3つの時期に賃貸住宅の建築が集中しています。
●1968〜1977年:高度成長期
●1985〜1994年:相続税対策バブル期
●2001〜2009年:不動産投資ブーム期
このうち築48〜57年にあたる物件は高度成長期に建てられたストックであり、現在の市場ではこの年代の賃貸住宅が飽和状態にあります。供給過多の中で築古物件を放置すれば、空室率の上昇や家賃の下落、収益の悪化という悪循環に陥るリスクが高まります。さらに、老朽化による修繕費用も無視できません。外壁・屋根の改修、給排水管の交換などには多額の費用がかかり、資金繰りが厳しいオーナー様にとってはご負担です。
このような状況を前にしても、「まだ何とかなる」と判断を先延ばしにすると、選択肢が限られてしまう恐れがあります。
したがって、リスクが顕在化する前に、「出口戦略」を検討し、適切なタイミングで行動を起こすことが、将来の損失を防ぐ最善策となります。
◆賃貸住宅のライフサイクルと3つの出口戦略
賃貸住宅には「新築 → 収益安定期 → 老朽化 → 空室増加」というライフサイクルがあります。築年数が増えるにつれて、修繕や管理にかかるコストは増加し、収益性は低下していきます。
築古物件を所有するオーナー様にとって、今のタイミングで「どう出口を設計するか」が、将来の資産形成を左右すると言っても過言ではありません。主な出口戦略は、次の3つです。
1:建て替え:長期的な資産価値の構築
築古物件を解体し、新たな賃貸物件として再出発する方法です。
新築によって最新の設備を取り入れられるうえ、減価償却の再開が可能になるため、所得が高い層にとっては税制面で大きなメリットがあります。
メリット
●新築により家賃設定の見直しができ、収益の最大化が期待できる
●高性能な住宅設備や省エネ基準に対応し、入居者ニーズを取り込める
●建て替え後は耐用年数がリセットされ、長期的に安定した経営がしやすい
デメリット
●建築費の高騰により、初期投資が膨らみやすい
●一般的に4~5か月以上の工期がかかり(木造アパートの場合)、その間は収益が途絶える
●現入居者との立ち退き交渉や補償が必要になる
2:再生(リノベーション):低コストで付加価値を高める
建物の基本構造を活かしつつ、間取り変更や住宅設備の刷新によって物件に新たな魅力を加える方法です。建て替えに比べてコストを抑えられ、短期間で施工できます。
メリット
●工事規模によっては数百万円台から実施可能で、投資回収がしやすい
●空室の部屋から施工できるため、既存入居者への影響を抑えつつ段階的に進められる
●流行に合ったデザインや機能性を取り入れれば、若年層や、DINKs(共働きで子どものいない夫婦)への訴求力が高まる
デメリット
●建物の構造上、間取りや外観の変更には制限がある場合もある
●耐震補強や断熱改修などまとまった追加コストが発生しやすい
3:売却:資産の現金化と柔軟な再投資
物件の売却によって資産を現金化し、より利回りの高い不動産や別の投資商品に乗り換える戦略です。
高齢のオーナー様が事業から撤退したい場合や、次世代への相続を見据えた資産整理にも有効な手段です。
新たな賃貸物件に買い替える場合
メリット
●築浅や好立地の物件への買い替えで空室リスクを低減できる
デメリット
●売却価格と購入価格に開きがある場合もある
金融資産に組み替える場合
メリット
●不動産特有の固定資産税や管理の負担から解放される
デメリット
●減価償却による節税効果がなくなるうえ、金融商品は相場に左右されるため、価格変動リスクがある