遺言書にまつわる注意点やトラブル ② 

自筆証書遺言・公正証書遺言

 遺言書の有効性と注意点に続いて遺言書に関する注意点をお伝えいたします。

 遺言書を作ると決めて最初にやるべきことは、「法務省 自筆証書遺言書保管制度」と検索し、その記載事項を「よくあるご質問」まで含めて全て熟読することです(「遺言書保管申請ガイドブック」がPDFで閲覧できるようになっていますのでこちらも熟読してください)。自筆証書遺言の書き方が書式を含めて懇切丁寧に解説されています。

 遺言は「要式行為」といって、民法で定められた要式を全て満たしたものでなければ無効になる非常に厳しいものです。作成年月日を「吉日」と書くだけでも無効になりますし、昔は全文について自署が求められ、財産目録を添付することも許されませんでした。

 弁護士も遺言書の作成を依頼されることがありますが、文案を作って依頼者に自署させるということは普通はしません。なぜなら、要式を欠いて無効になるのが怖いからです。そのため、遺言書の作成について相談された弁護士は、普通は自筆証書遺言ではなく公正証書遺言にするように勧めます。

  公正証書遺言は、公証人(定年を数年残して退官した裁判官や検察官が任命されます)が作成し、遺言者の面前で読み上げた後に署名捺印させ、原本を公証役場に保管します。自筆証書遺言でよく問題になるのが、遺言能力です。

 自筆証書遺言によって不利益を受ける相続人は、しばしば「遺言書作成時、被相続人は遺言書の内容が理解できないほどボケていた」という主張をします。更には改ざんや紛失のリスクもあります。

 一方、公正証書遺言は公証人が遺言者を呼び出し、遺言書の内容を全て理解できているかどうかを自ら直接確認した上で作成し原本を保管するため、遺言内容が死後に実現される可能性が極めて高くなります。公正証書遺言であっても遺言能力が否定されるケースはありますが、まれです。

 ただし、公正証書遺言は手数料がかかります。手数料は遺産の金額によりますが、一億円で5万5000円程度です。弁護士に依頼するのであれば、別途10~30万円程度の弁護士費用も必要です。

 これに対し、自筆証書遺言を法務局で保管してもらうための手数料は3900円です。遺言の内容を変更したいときは、預けてある遺言書の返還を受けて新たに3900円の手数料を払って新しい遺言書を預ければよいだけですので、とてもリーズナブルです。

 かつて自筆証書遺言は財産目録を含めて自筆でなければならならなかったので、多くの財産がある人にとっては作成や変更に大変な手間と時間が必要でしたが、現在はパソコンで作成した財産目録の添付が認められているため、自筆証書遺言を作成するハードルは大きく下がりました。財産目録を活用すれば、自筆でなければならない本文部分を省力化することができます。

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